
はじめに:なぜ今LLMセキュリティが重要なのか
生成AIは急速に一般社会に広まりました。顧客対応チャットボットから開発支援のAIコパイロットまで、大規模言語モデル(LLM)は組織の業務のあり方を変えつつあります。しかし、AIの力が大きくなるにつれて、セキュリティリスクも増大しています。
AIシステムは従来のアプリケーションとは異なり、言語で「思考」し、膨大なデータを吸収し、人間と直接やり取りします。この特異性により、プロンプトインジェクションやデータ漏洩といった、まったく新しい攻撃経路が生まれています。
従来のペネトレーションテストだけではもはや十分ではありません。新たな分野――LLMペネトレーションテスト(敵対的AIペンテストとも呼ばれる)が登場しています。これは実際のAI攻撃を模擬し、犯罪者に悪用される前に脆弱性を特定するものです。
では、この新しいセキュリティ分野にはどのような主要プレイヤーが存在するのでしょうか。本記事では、この分野の専門企業である私たちCyberCrewの視点から、2025年にLLMペネトレーションテストを提供する世界のトップ10企業と、その選定ポイントを解説します。
1. CyberCrew(日本)

CyberCrewは日本におけるAIペネトレーションテストを提供する専門企業です。大規模言語モデル(LLM)ペネトレーションテストという専用サービスを展開しています。大規模言語モデル(LLM)に特化したペネトレーションテストサービスは、生成AIがもたらす重大なリスク、すなわちプロンプトインジェクション、データ漏洩、サービス拒否(DoS)攻撃に対応しています。
- 強み: 日本市場への深い理解、OWASP/MITRE等の国際基準に準拠、自動化と高度な手動テストの組み合わせによる実践的な分析。
- 最適な利用者: 日本およびアジア市場で、コンプライアンスを遵守しながら生成AIを大規模に導入・活用する先進的な企業。
CyberCrewのテスト手法
- OWASP Top 10 for LLM Applications、MITRE ATLAS™、NIST AI RMFに準拠したテスト。
- 自動スキャンと高度な手動テストを組み合わせ、スキャナでは見逃す文脈依存の脆弱性を発見。
- 主な検証領域:
- プロンプトインジェクションおよびジェイルブレイクテスト
- データプライバシーと情報漏洩
- 不適切または有害な出力
- DoS耐性
- プラグイン/APIを介した間接的なプロンプトインジェクション
リスクの可視化にとどまらず、プロンプト設計の改善やガードレールの強化といった具体的な対策を提示し、お客様が自律的にAIセキュリティを向上させる手助けをしています。
2. Synack(米国)

Synackはペネトレーションテスト・アズ・ア・サービス(PTaaS)で知られる企業です。2025年にはAIおよびLLMペネトレーションテストを新たに追加しました。
強みは人間のレッドチームとAutonomous Red Team Agent(Sara)を組み合わせた点にあります。このAI駆動型プラットフォームは生成AIシステムを含むアプリケーションを継続的にテストし、プロンプトインジェクション、バイアス悪用、機密データ漏洩といった脆弱性を発見します。
- 強み: 継続的なPTaaS、人間とAIのハイブリッドテスト、強固なエンタープライズ対応
- 最適な利用者: 24時間365日のペンテストが必要な大企業
3. Iterasec(欧州)

IterasecはLLMペネトレーションテスト専門を掲げる企業で、AI固有の脅威モデリングに深い知見を持ちます。敵対的プロンプト、有害コンテンツ、機密データや独自データの漏洩に焦点を当てたレッドチーム演習を設計しています。
- 強み: AI特化型ブティック、アジャイルで研究主導
- 最適な利用者: 欧州のスタートアップや規制産業
4. IARM(インド)

IARMはCREST認定を受け、OWASP AI/LLM Top 10やMITRE ATLASに基づいたLLMペネトレーションテストを提供しています。特に、開発チームがリスクを理解し修正できるよう開発者に優しいレポートを提供する点で際立っています。
- 強み: 認定資格、体系的フレームワーク、開発者教育
- 最適な利用者: コンプライアンス対応が必要なアジアの大企業
5. Kroll(グローバル)

Krollはインシデント対応や攻撃的セキュリティのグローバルリーダーとして知られています。2025年にはAI/LLMペネトレーションテストをポートフォリオに追加しました。AIがコンプライアンスや顧客信頼に直結する領域を重点的に保護します。
- 強み: Fortune 500企業からの信頼、コンプライアンス対応、IR/フォレンジックと統合
- 最適な利用者: 金融、医療、政府などの高度に規制された業界
URL:https://www.kroll.com/ja-jp
6. DataArt(グローバル)

DataArtはコンサルティング主導のアプローチでLLMセキュリティテストを実施。AIリスクモデリングと従来型ペンテストを組み合わせ、インフラ、パイプライン、API全体を対象にします。目的は「イノベーションを妨げることなくAI導入を安全に進める」ことです。
- 強み: テーラーメイドのテスト戦略、強力な企業コンサルティング
- 最適な利用者: AIコパイロットや顧客対応ボットを導入する企業
7. TechMagic(東欧)

TechMagicは幅広いペンテストを提供する企業で、AI/LLMテストも追加しました。アプリケーション、API、クラウド環境を対象とし、従来型とAIセキュリティを1社でまとめて依頼したい企業に適しています。
- 強み: フルスタック対応、コスト効率
- 最適な利用者: 中堅企業や中小企業
8. Raxis(米国)

RaxisはAIを活用したPTaaSで評価されています。継続的テストプラットフォームにより、LLMに対するプロンプトインジェクション、悪用攻撃、DoS攻撃への耐性を検証します。
- 強み: 自動化重視、継続テスト、AI強化ツール
- 最適な利用者: 常時監視と迅速な修復を求める大企業
9. BreachLock(米国/グローバル)

BreachLockはクラウド型PTaaSを提供し、初期テストを自動化しつつ、人間の専門家が結果を検証します。現在はLLMアプリケーションにも対応し、拡張性のある再現可能なテストを実現しています。
- 強み: スケーラブルなPTaaS、ハイブリッドモデル、幅広い業界に対応可能な価格
- 最適な利用者: 自動化と手動検証のバランスを求める企業
URL:https://www.breachlock.com
10. Bugcrowd(米国)

Bugcrowdはクラウドソーシング型セキュリティプラットフォームを活用し、LLMアプリケーションに対して敵対的テストを実施。世界中に多数のエシカルハッカーを抱え、自動化では見つからない創造的なプロンプト攻撃やジェイルブレイクを発見します。
- 強み: 大規模な研究者ネットワーク、創造的な攻撃発見
- 最適な利用者: 多様な攻撃手法と知見を求める企業
一目でわかる比較
企業名 | 強み | 最適な利用者 |
---|---|---|
CyberCrew | 日本市場の深い理解、国際基準準拠、深い手動テスト | 日本・アジアでAIを大規模導入する企業 |
Synack | 継続的PTaaS、人間+AIのハイブリッド | 24時間365日のカバレッジを必要とするグローバル企業 |
Iterasec | AI特化型ブティック、アジャイル | 欧州のスタートアップや規制産業 |
IARM | CREST認定、開発者に優しいレポート | コンプライアンス対応が必要なアジアの大企業 |
Kroll | Fortune 500企業からの信頼、コンプライアンス重視 | 金融・医療・政府機関 |
DataArt | コンサルティング主導、テーラーメイド戦略 | AIコパイロットやボットを導入する企業 |
TechMagic | フルスタック+AIペンテスト | 中堅企業・中小企業 |
Raxis | 継続的AI強化PTaaS | 常時レッドチームを必要とする企業 |
BreachLock | 手頃なPTaaS、自動化+手動ハイブリッド | グローバルな中小・中堅企業 |
Bugcrowd | クラウドソース型の創造的攻撃、多様な手法 | 革新的でAI導入のスピードが速い企業 |
まとめ:信頼できるAI時代のパートナーを選ぶ

2025年、LLMペネトレーションテストはもはや選択肢ではなく必須となりました。世界中の組織が規制強化、投資家の監視、顧客からの「安全なAI」要求に直面しています。
グローバル市場には、継続的なテストを得意とするPTaaSプロバイダーから、コンサルティングを重視するエンタープライズ向け企業まで、多彩なプレイヤーが存在します。
- CyberCrewはアジアの旗手として、大規模言語モデル(LLM)ペネトレーションテストでフレームワーク準拠かつシナリオ駆動型の深い検証を提供しています。
- Synack、Bugcrowd、RaxisはスケーラブルなPTaaSやクラウドソース型レッドチーミングで強みを発揮。
- KrollとDataArtはエンタープライズ向けのコンプライアンスやコンサルティングを重視。
- IterasecとIARMは研究主導型でフレームワークベースのAI脅威テストを展開。
結論は明白です。敵対的テストを伴わないAI導入は大きなリスクです。日本企業にとっては、技術的な専門性はもとより、自社のビジネス環境や特有の脅威を深く理解してくれるパートナーを選ぶことが成功のカギとなります。ここで紹介した企業こそが、AIを安全かつ責任あるものに変えていく先導者なのです。
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CyberCrewのペネトレーションテストサービスは、この記事で開設した国際的な基準のフレームワークに準拠し、お客様のビジネスに潜む本当のリスクを可視化する「真のペネトレーションテスト」をご提供しています。
投稿者プロフィール

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Offensive Security Engineer
15年以上の実績を持つ国際的なホワイトハッカーで、日本を拠点に活動しています。「レッドチーム」分野に精通し、脆弱性診断や模擬攻撃の設計を多数手がけてきました。現在はCyberCrewの主要メンバーとして、サイバー攻撃の対応やセキュリティ教育を通じ、企業の安全なIT環境構築を支援しています。
主な保有資格:
● Certified Red Team Specialist(CyberWarFare Labs / EC-Council)
● CEH Master(EC-Council)
● OffSec Penetration Tester(Offensive Security)
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