
2025年7月3日にThe Hacker Newsが報じた内容によると、352種類の不正Androidアプリによる広告詐欺「IconAds」や、正規アプリを装う「Kaleidoscope」など、多数の新たなモバイル攻撃手法が明らかになりました。これらは単なる広告詐欺にとどまらず、金融詐欺や個人情報の窃取など多様なリスクが報告されています。日本国内でも他人事ではない可能性があり、具体的な手口や対策について解説します。
The Hacker News:Massive Android Fraud Operations Uncovered: IconAds, Kaleidoscope, SMS Malware, NFC Scams
この記事のポイント
影響のあるシステム
- Androidスマートフォン・タブレット
- Google Playストアで公開されていた一部公式アプリ
- サードパーティのアプリストアや非公式Webサイト経由で入手したアプリ
- NFC(近距離無線通信)機能付きのAndroid端末
- SMS認証を利用する金融アプリや決済アプリ
- iOS端末(SparkKitty等一部マルウェア)
推奨される対策
- アプリは必ずGoogle Playなど正規ストアからのみダウンロードする
- 不要なアプリや見覚えのないアプリは早めにアンインストールする
- 端末のOSやアプリを常に最新バージョンへアップデートする
- NFC機能やSMS権限の不要なアプリには権限を与えない
- 不審なSMSやメッセージ、見慣れないアプリのインストール案内には注意する
- 二段階認証コードなどは他人に教えない・入力しない
- 万が一情報を入力してしまった場合は、金融機関にすぐ連絡し対処を依頼する
この記事に出てくる専門用語
- IconAds:352種類の不正Androidアプリを利用した広告詐欺キャンペーン。アプリのアイコンや名前を隠し、ユーザーが気付かないまま不正広告を表示し続けます。
- Kaleidoscope:Google Playの正規アプリに偽装した「双子アプリ」攻撃。見た目は正規アプリと同じだが、偽バージョンは不正広告や情報窃取を行います。
- NFC(近距離無線通信):スマホ同士や決済端末での非接触通信に使われる技術。悪用されると、遠隔で不正な決済や現金引き出しに利用される恐れがあります。
- Qwizzserial:主にウズベキスタンで使われていたSMSを盗むマルウェア。銀行系アプリの認証コードや個人情報を外部へ送信します。
- SpyMax RAT(SpyNote):スマホ内の情報を遠隔操作で窃取するマルウェアの一種。スパイウェアとも呼ばれます。
- SparkKitty:iOSとAndroidを標的にするマルウェア。スマホ内の画像から、暗号資産のウォレット情報などをOCRで抽出する機能があると指摘されています。
なぜAndroid向け不正アプリは次々と見つかるのか?

近年、Androidアプリを悪用した詐欺が世界中で問題となっています。今回明らかになった「IconAds」は、352種類もの不正アプリを組織的にGoogle Playへ公開し、ユーザーが気付かない形で大量の不正広告を表示させていたとされています。この種の手口は数年前から「HiddenAds」や「Vapor」とも呼ばれ、アプリのアイコンや名前をホーム画面から隠すなど、ユーザーに気付かれない工夫が進化しています。アプリをインストールすると一時的に通常のアイコンが表示されますが、すぐに消えてしまうため、アンインストールが困難になる傾向があるようです。多くのアプリはGoogle Playから既に削除されていますが、手口は常に変化し続けていると報告されています。
「双子アプリ」手法とサードパーティストアのリスク
「Kaleidoscope」などの手法は、Google Playで配信されている公式アプリと、サードパーティのストアや非公式サイトで配布される悪質なコピーアプリ(いわゆる「双子アプリ」)を同時に使うことで、より巧妙な詐欺を実現しています。見た目がほぼ同じであるため、一般ユーザーが区別するのは非常に困難です。悪質なバージョンは、画面いっぱいの広告を表示したり、ユーザーの操作と関係なく広告収益を不正に得ているとされます。日本国内でも公式ストア以外からのアプリインストールには十分な注意が必要と考えられます。
金融詐欺や個人情報流出も拡大

近年では、単なる広告詐欺だけでなく、NFC機能を悪用して現金を不正に引き出すケースや、SMS認証を突破して銀行口座情報を盗む「Qwizzserial」など、より深刻な金銭被害も報告されています。日本国内でも非接触型決済やSMS認証は広く使われているため、決して対岸の火事ではありません。たとえば、NFCのリレー攻撃ではスマホを介して遠隔地からATMを操作する手口や、銀行認証コードが盗まれる事例も発生しているようです。アプリに不必要な権限を与えない、SMS認証の重要性を見直すなど、今一度自分のスマホの使い方を確認することが大切です。
マルウェアはアジアや日本でも狙いを広げている
近年、TelegramやLINEなどメッセージアプリを通じて拡散される偽アプリも増加傾向です。特に、公式を装ったグループや知人からの招待を装い、無意識のうちにマルウェアをダウンロードさせる手口が観測されています。ウズベキスタンのQwizzserialやインドのSpyMax RATなど、SMSや電話の権限を要求し、銀行アプリの認証コードや個人情報を盗むものもあり、日本の金融アプリ利用者も標的になる可能性があると指摘されています。また、iOS向けの「SparkKitty」では、端末の画像から暗号資産ウォレットの情報をOCRで抜き取るという新たな手法も確認されました。これらの情報は世界中で共有されており、今後日本国内で同様の手口が広まる懸念もあります。
被害に遭わないために、個人でできることは?

不正アプリによる被害を防ぐには、まず「公式ストア以外からはアプリを入れない」「不要な権限は与えない」「端末やアプリは常に最新に保つ」といった基本を徹底することが最も重要です。加えて、不審な広告や通知が頻繁に表示される場合は、速やかに専門家やキャリアのサポート窓口に相談することも推奨されます。また、家族や同僚とも情報を共有し、怪しいアプリや手口があれば注意喚起し合う習慣づくりが大切です。今後も攻撃手法は進化する可能性がありますので、常に最新の情報に目を向けておくことが安心につながります。
参考文献・記事一覧
- The Hacker News: Massive Android Fraud Operations Uncovered: IconAds, Kaleidoscope, SMS Malware, NFC Scams
- HUMAN: Satori Threat Intelligence Alert – IconAds
- IAS Threat Lab: Kaleidoscope Report
- Group-IB: The rise of Qwizzserial
- Kaspersky: SparkKitty iOS/Android malware
投稿者プロフィール

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